クロマ
クロマ
「ならあの子はなぜ出てこないのよ。この状況をあの子が見過ごすとでも思う訳?!」
少女の叫びに、
「それは簡単だ。『陽』、『陰』両者を含めた『月夜』という人間が弱いからだ。自分が信頼していた人間に責められるのが怖いだけだろう『死霊使い』、いや、『陰』の精神に眠る『月夜』とやら」
冷水を浴びせるように鋭利な言葉で少女の心を傷つけるセイン。
「自分が街の人々を殺してしまった。自分がいなければこんなことは起こらなかった。それは事実だろう……だが貴様が死ねば彼等は帰って来るのかっ?!答えろ、『陽』の『死霊使い』っ!」
少女の肩を掴み、激しく揺さ振るセイン。
「そんなのは罪の意識から逃げているだけだ。自分を偽善者だと言って何も成さない者は偽善者以下だっ!」
しかし、少女は何も言わない。
その姿を見たセインは左手を月夜の胸にあてて、詠唱を始めた。彼の精神体が光に包まれ始める。
「な、何をする気?!」
少女の叫びに対し、
「貴様の中に眠る『陽』の人格を直接起こしにいく」
サンの呪力によって精神体となっている今の自分なら可能なはずだ。
セインがそう返答すると、少女は、
「あんた、正気?もうほとんど呪力も残ってないのに、そんなことしたら死ぬでしょ?」
信じられない、といった表情でセインを見つめた。
しかし、セインはふっ、と微笑みをこぼし、少女に告げた。
「人は、命を投げ打ってでも為さなければならないこともある。お前の両親のようにな」
セインの言葉で少女の表情が強張る。
「お前にもいつかわかる時がくる……『陰』の『死霊使い』…… 」
セインはそう呟くと、彼の精神は少女の視界から消えた。