マンサー73
マンサー73
セインの答が何を言わんとしているのかわからない少女は、一瞬沈黙してしまった。
「……ここは貴様自身の精神……俺が周囲の村で体験してきた地獄も、すでに見ているのだろう?」
セインは確認するように少女に問い掛ける。
「俺には俺の守りたい人々がいた。そして、今の自分の力では全く犠牲を出さずに村を救うことは出来ないと判断した」
「…………」
「……そう、俺は自分が救いたい人々の為に、他者を犠牲にしたのだ……」
しかし、セインの表情には後悔や自責の念のようなものは感じ取れない。
「成る程ね。あんたも一流の偽善者よ」
「……否定はしない……だがっ!」
セインの鋭い眼光が少女に向けられる。
「貴様はどうなのだ、『死霊使い』っ?!」
少女に向かって再び歩み出すセイン。
「何もかも放棄した貴様は一体何様のつもりだっ?!偽善者ですらないではないか!」
「はっ!だからあたしには関係無いって……」
しかし、セインは、
「いいや。あの『死霊使い』の『陰』が貴様だというのであれば、奴の心は崩壊など起こしてはいないっ!」
首を横に振りながら少女の言葉を真っ向から否定する。
「…………!」
「そうだろう?人の心は表裏一体。どちらかだけで存在することは不可能のはず。人の心は『陽』と『陰』でできているのだからな」
『陽』と『陰』。どちらかを欠いてでも精神を支える事は無理だ。なぜなら人は『陽』があるから、『陰』を自覚できるのであり、『陰』がなければ『陽』も自覚する事は出来ない。