放棄
放棄
セインの言葉に対し、
「違うっ!」
月夜は激しく反発した。その瞳には両親を嘲笑われたことにで渦を巻いている。
「ではどう違うというんだ。貴様はせっかく両親に救われたその命を無駄にしようとしている。そんな貴様を助けた者が愚かと言わずになんと言うんだ?」
セインは月夜の怒りを増幅させるような言葉を投げかける。
「そんなことは、そんなことはないっ!」
「苦しみから目を逸らし、思考を放棄した末に周りの者を巻き込むオーバーロードを起こしたお前が、何を言えるんだ?」
月夜は悔しそうにセインを凝視する。
「……もう何も言えなくなったか?」
セインは嘲笑うようにはんっ、と鼻を鳴らした。
「悔しかったら、ここから抜け出してみろ。さもなくば羅刹やアシュタル、街の人間も皆死ぬことになる」
セインは不敵な表情を浮かべた。
怒りに駆らせて月夜にここを抜け出させようというのだ。
月夜はセインの脇を通り抜けるように走り出そうとしたが、
「きゃっ!」
月夜はセインの蹴りを腹に受けてしまった。その小柄な体が後方に飛ぶ。
「甘ったれるなよ。一度捨てたものがそんな簡単に拾えるとでも思っているのか?」
怒りに駆らせてここを出させても、またオーバーロードが起こるかもしれない。怒りだけでは駄目なのだ。それだけで月夜は立ち直れない。
月夜はよろめきながらなんとか立ち上がる。
「逃げるのなら今回だけは見逃してやる。所詮、貴様は苦しみから逃げることしかできまい」
セインは月夜を挑発するようにそう言った。
月夜はよろめきながらセインに向かって歩き出す。
「あたしは、逃げない……絶対に逃げないっ!」
叫びと共にセインに殴りかかるが、セインは軽々とそれをかわし、逆に月夜の腹に拳を打ち込む。月夜はけほけほと、苦しそうに咳き込む。
「死んでいった者の苦しみはそんなものではないぞ」